非絶縁DC-DCコンバータモジュールDC-DCコンバータの損失計算

DC-DCコンバータで使用している各素子の損失の算出方法を説明します。

DC-DCコンバータの損失計算

DC-DCコンバータの損失について

DC-DCコンバータの損失の中で、特に影響の大きいものは以下になります。

  1. スイッチの導通損失
  2. スイッチのスイッチング損失
  3. コイルによる損失(鉄損・銅損)

その他にも、FETのゲート電荷損失、制御ICの動作損失、コンデンサのESRによる固定損などいくつかあります。

スイッチ素子の損失

FETスイッチの損失には、導通損失(Pon)とスイッチング損失(Pr、Pf)があります。

イメージ図

スイッチ素子の導通損失

スイッチ素子FETの導通損失はFETがONしたときに発生し、以下の式となります。

計算式(5)
Rds(ON)
ON時のドレイン–ソース間抵抗[Ohm]
Iout
負荷電流[A]
D
オン・デューティ

Rds(ON)が小さいFETを使うと導通損は小さくなりますが、一般的にFETの世代ごとにRds(ON)×Ciss(FET入力容量)は一定になるため、 Rds(ON)が小さくなると、反対にCissは大きくなり、この後に説明するスイッチング損失に影響します。
そのため、FETは電源仕様に合わせて最適な特性のFETを選択する必要があります。

イメージ図 計算式

スイッチ素子のスイッチング損失

直線的に電圧・電流が上昇すると仮定すると、下記の式で簡易的に損失を算出できます。

計算式
イメージ図
計算式
イメージ図

コイルの損失

コイルの損失は、巻き線による銅損とコア材による鉄損があります。

コイルの損失の種類
銅損
巻き線の直流抵抗による直流銅損と表皮効果により増大する実効抵抗による銅損。
鉄損
主なものとしては、ヒステリシス損と渦電流損。ヒステリシス損とはスイッチングによってB-H特性カーブを描いたときの面積に相当する部分。渦電流損とは鉄心に発生する渦電流による損失。

DCロス(PLDCR)は、負荷電流の2乗に比例して発生します。
低負荷のときは電流が小さいのでDCロスは小さいですが、負荷電流が増加するとDCロスも大幅に増加します。

計算式

一方、コイルに流れる電流のAC成分は、入出力電圧や周波数によって決定されます。
そのため、ACロスの大きさは負荷電流が変化しても大きく変わりません。
(なお、AC損失の計算は複雑なため、ここでは取り扱いません。)

そのため、低負荷領域ではACロス、高負荷領域ではDCロスが支配的になります。